大学院大学設立準備委員会

設立の趣旨

 このたび、池上惇(京都大学名誉教授)、植木浩(元文化庁長官)、福原義春(株式会社資生堂名誉会長、元企業メセナ協議会会長)の3名が呼びかけ人となり、学校法人「京都知芸学院」および「文化政策・まちづくり大学院大学」を、社会人を対象に、通信制を採用して設立することを提議する。
 日本経済がキャッチアップ型から成熟社会に移行するにつれて、大きな社会変動を経験してきている。各地の過疎・過密問題、少子高齢化の波、産業構造の高度化と経済停滞、さらには東日本大震災などが加重され、今や都市や地域社会は経済不況、人口減少、絆の喪失など、深刻な崩壊の危機に直面している。
 他方で、地域固有の文化資源を生かした地域再生の動き、文化によるまちづくりの取組も始まっている。多様な固有文化資源を発掘し、有効にコーディネイトする人材が、文化の経済化、商業化、産業化を推進している。これらは、欧米の文化経済学者や文化政策学の実践者によって、19世紀以来開発され、経験が積み上げられてきた事例を参照するとともに、現在は東アジアでも多彩な伝統文化をふまえた文化産業の育成や発展の動きとも連動している。
 戦後の日本の地域再生を目指す文化政策の展開とその理論化を担う文化経済学の本格的な取組みは、1990年代にようやく着手された。池上らの3名は、この時期に文化経済学会<日本>を設立し、企業メセナ協議会を発足させ、国際的な交流も含めて、日本における文化経済学と文化政策学の発展をリードした。その後に関連学会も多数発足し、各地の大学で文化経済学や文化政策学の講座が開設され、大学院の設置も進んだ。2000年前後には国際的なギャップを克服した。文化芸術振興基本法やコンテンツ促進法によって、日本独自の展開が前進している。
 しかし文化政策が真に解決すべき課題、すなわち文化資源を生かした地域再生を目指し、将来の構想を描く、人材の育成と能力の形成や発展は、未だに不十分である。その体系的な教育・研究と実践の場を設計し、高度専門職業人として育成することは喫緊の課題である。東日本大震災以降に地域活性化を果たすためには、文化政策によるまちづくりの推進と、その理論構築を担う文化経済学の専門家を養成するために、独立大学院大学を新設し、産・公共・学の総合的連携を実現する人材を持続的に輩出し、全国に定着させることが重要である。
 文化政策・まちづくり大学院大学は、その専門的な研究分野を文化経済学に定め、文化の振興を通じてその事業化や産業化を目指して、地域の活性化を担う人材を育成する。各地の現場にとどまって実践の興隆と研究が進めることができるように通信制を採用し、修士論文の作成に向けた実力を蓄積することを重視して、教育に取り組む。本学の修了生が全国各地で活躍するように支援できる体制も整備して、人材の輩出の課題に応えることが本学設立の基本的な趣旨であり、社会的な責務であると考える。
 関係各位の深いご理解を賜りたい。

2007年1月 発起人代表 池上惇